「成長する有機体」としての学校とこれからのリーダシップの在り方
「成長する有機体(a growing organization)」とは、インドの図書館学者であるランガナータンが図書館の五法則としてあげた5つ目の法則にある言葉である。つまりこれは、図書館について述べた言葉なのだが、昨今の学校の自律性を高めるための議論をみていると、私は学校もこれからは「成長する有機体」として考えられるべきなのだと思えてくる。
同様の考えは、中留武昭(2001)「新しい学校経営概念の創出:流動化する月光組織と関わって」、『日本経営学会紀要』第43号、にみられる次の言葉にも如実に示されている。すなわち、最近の学校経営観を振り返った上で中留は次のように述べている。
「この学校経営概念における学校組織体観は、学校が存続・発展していくために必要な諸活動を共存関係(eco-system)の改善過程として捉えながら、その改善過程において学校は組織体としてウチ(学校内部)においてもソト(学校外)に対しても環境に対応することを通して、問題解決をはかりながら自己成長していく「開放系の組織体」として機能することを意味している。」(p.167)
ここで学校は、単なる行政の末端組織としてではなく、自ら頭脳を持ち外部と内部を適応的に調整していく有機体としてイメージされている。
このとき、校長をはじめとする管理職のリーダーシップはこれまで以上に重要な要素になるだろう。リーダーが組織の内外を適切に見渡すことが肝要になると思われる。この点で、河野和清(2005)「教育委員会の学校統括機能と学校経営者の役割転換」、『日本学校経営学会紀要』、第47巻、pp.13-23 の考察は参考になる。すなわち、河野はバーナード(Barnard, L.)のリーダーシップ論に依拠しながら、校長をはじめとする学校経営者の新しい役割を以下のような5点にまとめている。
第一に、学校組織が目的を達成させるには、同時に成員の動機づけが重要である。そのために学校経営者は新しい教育ビジョンを構築する役割がある。
第二に、学校経営者は個人と個人、個人と組織、組織と環境の間に生じる価値葛藤を調整する役割が求められる。それには、それらの葛藤を止揚しうるような新しい価値(基準)を常に想像する能力が必要である。
第三に、学校経営者は人的資源の開発に力を入れるべきで、それには外発的な動機や欲求(たとえば給料など)よりも、達成感や教育的使命感といった内発的な動機や欲求を基軸にして、力量形成することが重要である。組織が成員の高いパフォーマンスを期待するのであれば、その仕事場が自己実現の場となる必要がある。
第四に、学校経営者はとくに教育課程の編成において、リーダシップが発揮できなければならない。教育課程は、「世界の動き、社会展望、子どもの実態、能力観、子どもの発達理論を十分に踏まえて編成する」ものであり「相当の見識が求められる」作業である。
そして第五に、学校経営者は教育活動の成果を評価し、その結果を保護者や社会に説明する責任(アカウンタビリティ)を果たすという役割がある。評価(自己評価や学校関係者評価)とその説明は保護者のニーズをはじめとする外部環境の変化を知り、それに対応するためにも必要である。
河野のいうようなリーダーシップを学校経営者が発揮し、「成長する有機体」となっていくには、教育委員会の役割も徐々に変化させなければならない。すなわち教育委員会はこれまでのように学校を統制する役割から、学校の援助者という側面にその役割をシフトさせていく必要があるだろう。
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